あいちトリエンナーレを一日でまわる。  T 豊田市美術館・豊田市駅周辺

 次に向かったのは、今回の会場の中で唯一名古屋市から離れる豊田市美術館とその周辺。1時間強はかかる。今まで何度も足を運んだ豊田市美術館であるが、その周辺は特に見たことがなく、行き来をしていただけだった。今回印象に残った作品があったのはそんな周辺に展示されていた作品たちだ。

 

 ひとつめはトモトシの《Dig Your Dreams.》だ。

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この作品は、縄文時代トヨタ自動車が生まれ、その当時の広告を出すならどんなものだっただろうという架空の設定のもと制作が始まったそうだ。一か月の間、地面を掘り続け、トヨタ自動車の本社の方向を向いたトヨタのエンブレムを作り、その溝に土器をはじめ様々なトヨタ関連の品を配置、そして公募により集まった豊田市民による発掘を行う。写真はその土を掘って作られたエンブレムだ。

 この制作をするきっかけになったのが、トヨタの本拠地であるにもかかわらず、街には特にトヨタの広告はない、なぜだろうという興味からだったそうだ。私自身この疑問は感じたことがある。初めて豊田市に行ったとき、ここがトヨタのお膝元なのに意外にもトヨタという文字は見ないなと思ったものだ。

 建物内には「発掘」されたトヨタのエンブレム上の溝と、その発掘をするきっかけとなった土器の破片、そして復元された土器、そして発掘作業の様子を撮影した映像が上映されていた。この復元された土器が実に面白おかしい。

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いかにもな棚やガラスケースに仰々しく展示された土器、そしてもっともらしい解説文には「トヨタ文」というワード。とてもそれらしい展示に思わずくすりとさせられた展示であった。何より豊田市という場で行う展示として面白かったように思う。

 

ふたつめは豊田市美術館のそばにある旧豊田東高等学校内のプールを使用した、高嶺格の《反歌:見上げたる 空を悲しも その色に 染まり果てにき 我ならぬまで》という作品だ。

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タブロイド紙によると、社会の中で見えなくなっている問題を、自身の個人的体験や身体的感覚に引きつけて、映像・インスタレーション・舞台等様々な媒体で浮かび上がらせるアーティストだそう。今回トリエンナーレで発表されたこの作品は、廃校となった高校のプールの底を垂直に立てているというものだ。会場ボランティアに聞いた人によると、この壁の高さは、トランプ大統領が不法移民や薬物密輸対策として、メキシコとの国境へ建設することを主張している壁の高さと同じそうだ。それを事前にTwitterで見ていたので、あまりの迫力と、自分の目の前に突然この高さの壁ができたらと想像して少しおののいてしまった。

 

 最後に作品の写真は禁止だったのでないのだが、駅の近くにある喜楽亭という建物で展示されていたホー・ツーニェンの《旅館アポリア》の話を少し。

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実際に神風特攻隊員が泊まった宿らしく、その建物全体を使い映像が流れていた。その内容は女将の話や、プロパガンダ作品がモチーフだ。特に2階はほとんど暗い室内で、横山隆一のアニメを見るのはすごい体験だったように思う。轟音で建物が震えている演出もすごかった。実際すべてを見ると100分近くあり、時間のない私はほとんど見ることができなかったため、詳しい感想が言えないのが残念。会期も長いし、この作品は無料で見ることができるので、また来ることが出来たら優先的に見ようと考えている作品の一つだ。

 

 余談だが、いつも豊田市美術館へは歩いて行くのだが、今回は時間がなかったので行きはバスに乗った。いつもと違う入り口近くにバスが止まったので、そこから美術館に入ったのだが、すぐ近くにこんなものがあった。少し違うところから入るだけでこんな発見があるとは。外で売っていたクラフトコーラを飲みながら見学した。

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